10/28(木)コンペティション『カランダールの雪』の上映後、ムスタファ・カラ監督、ネルミン・アイテキンさん(プロデューサー)、ビラル・セルトさん(脚本)、ハイダル・シシマンさん(俳優)をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
ムスタファ・カラ監督(以下、監督):皆様ようこそ。私たちと一緒に映画を観ていただいて、大変ありがたく思います。気に入っていただければと思います。
ハイダル・シシマンさん(以下、シシマンさん):今晩、皆様方とこうしてご一緒できて、大変幸福に思っております。世界の遠いところからはるばるやって参りました。作品を気に入ってくださったのであれば、大変嬉しく思います。
ビラル・セルトさん(以下、セルトさん):皆様、こうして参加していただき、私たちを誇りに思わせてくださり、ありがとうございます。ある一つの物語を私たちは作り上げました。
ネルミン・アイテキンさん(以下、アイテキンさん):こんばんは。映画はトルコで制作いたしました。しかし世界中のどこでも同じように感じていただける、そういう映画だと確信しております。ずっと辛抱強くご鑑賞いただきありがとうございました。
Q:監督はドキュメンタリー作品を作っていて、今回が初フィクション長編とううかがっています。かなり長い期間、撮影をされたようですが、準備から撮影、そして今日ここに至るまで、どれくらい時間がかかったか教えていただけますか?
監督:最初のアイデアが出てそれをシナリオ化し、それから事前準備、制作、制作後の活動、そのすべての過程を合わせますと、4年間ほどかかりました。
Q:今回の撮影でもっとも困難だったことはなんでしょうか?
セルトさん:最も困難だったのは、すべての過程を通じて、ストーリーから始まり、俳優、現地の空間、動物に至るまで、すべてを総合して一堂に会させ、環境を設定することでした。このストーリーを現実的なものにするためにはドキュメンタリーのような現実味が必要で、それをキャッチしなければなりませんでした。そして、自然にいかにして近づいていくかということが、とても難しかったです。
Q:シシマンさんは岩にしがみついたりと、俳優の皆さんも本当に大変な思いをたくさんされていると思います。撮影で困難だったことはうかがえますか?
シシマンさん:もちろん全てのシーンが難しかったわけですが、困難の度にムスタファさんが現地のセットで私に動きをつけてくれました。撮影の前にそれをいつもやってくれました。私のことを信頼して役柄を与えてくださった監督に感謝を申し上げたいと思います。
そして、今作を通じて次のことが言えると思います。もし私たちや皆さんが何かを望むなら、必ずそれは成功します。そのことを強く望み、努力し、辛抱強くあれば、あらゆるネガティブなことにも関係なく、成功します。それを今日、皆さんに視聴していただくことができました。シナリオを読んだときには、実はこれほど難しいとは思わなかったんです。もっと簡単なことだと思っていましたが、そうではなかった。普段、私たちは町に住んでいて、自然とともにやっていくことがどれほど難しいことか考えもしませんでした。このプロセスをやりながら、自然と向き合い、私自身も向上することができました。自然に対して、より自分自身が適応するようになったんです。そうすることによって、私自身がムスタファになっていきました。ムスタファは山で暮らしていてこういった生活をしている人です。私はムスタファをひとつのモデルとすることによって、彼のようになったのです。
Q:物語の必要上、闘牛という展開に持っていくために牛は必要だったと思います。しかしそれ以上に、牛という動物はものすごくシンボリックな動物です。文化や宗教や国によっても解釈が違います。闘牛という展開以上に、色々な意味を持たせるために牛を登場させたのでしょうか。
監督:すばらしいコメント、解釈をいただきありがとうございます。ここでの牛については、特に闘牛の役割以外に意味を込めたということはありません。メフメットが鉱脈を探すのと同じように、彼が自らを自己証明する。そのブランクにおいて使われる必要な要素の一つということです。鉱脈と同じで、自己証明を助ける一つの要素ということです。したがって、それ自身の意味の他に何かのメタファーや象徴的な意味があるわけではありません。
Q:撮影はトルコのどこでされたのでしょうか。トラブゾンですか?
監督:トラブゾンです。他にもトルコの北の方、極寒地方のいくつかのところで撮りました。
Q:この映画は、お金を稼ぐというのが一つの大きなテーマなのでしょうか。また、お金を稼ぎたいと思っている方に対するメッセージは何かありますか?
セルトさん:あまりすっきりしない答えかもしれませんが、お金持ちになりたければメフメットにならないように、ということですね。そもそも鉱脈を見つけてお金持ちになるという目標すら彼にはないんです。なぜなら、お金持ちというのがどのような概念なのか、それすら彼は知らない。彼にとって大事なのは、生きることに必死になってしがみつくこと。自らの存在を確認し、知らしめるということなのです。
彼は鉱脈を見つけますが、その鉱脈を見つけたことでお金持ちになったとは思わないでください。鉱脈を見つけたとして、それは彼にとって一つのフロントを開けるものになる。そこでサンプルを持って行き、検査されて、彼にわずかな賃金が支払われるということになります。その賃金で彼が何をできるかというと、せいぜい借金を返すことぐらいで、それが終わったらまた以前と同じような生活をすることになるのです。ここで鉱脈というのは彼にとって希望を約束するもの、自由の保障となるものです。彼はその村に縛られたくない、自由な精神を持って生きたいと思っている。それができる唯一の場所が、彼にとっては山なんです。その方法というのが鉱脈なんです。
Q:実際にまだあのような暮らしをする村が存在するのですか?それともこの映画のために想像したものなのでしょうか。
セルトさん:実際にあります。メフメットの役柄のような人々が何百万人もいる。メトロポリスにも、村にも町にもいる。大都会のゲットーの中にもいる。メフメットというキャラクターは、彼の持つ感情、一つの衝突で、葛藤なんです。
Q:この映画を作るきっかけは何ですか?田舎の生活を通じて、現代の都心に住む私たちにメッセージとして強調したかったものはありますか?
監督:ただ単にその地域を表現したわけでも、その地域の神秘性や興味深いところを表現したかったわけでもありません。田舎の方に沢山の人々が住んでいる。いろんな希望を持って生きている人々がいて、自らの存在を証明しようとしている。そして配偶者や人々と問題がある。こういった人々と、現代的な生活をしている私たちのあいだには。そもそもどんな違いも存在していないのではないかと、あるいは違いがあるとしたらそれはどんな違いなのか、そういったことを自らに対して私は問いかけました。そしてその答えを得ようとしました。製作のモチベーションとしては、こういうことだと思います。
Q:今回は自然や動物が相手ということで、当初予定していた脚本と出来上がったものが変わってしまった部分はありますか?
セルトさん:シナリオを書き始めた段階で様々なアイデアはありました。それを100%適用することができたたかというと、もちろんそうではありません。当初は200~300ページあった脚本を70~80ページにしましたから。デスクワークでやったことを必ずしも現実的に反映できるわけではありません。実際の空間やセットを見てみるといろんなことが違う。地域の混乱や問題もあります。そうした理由で、この最後の状態になりました。
監督:大変困難な映画でして、こうなると撮影計画も容易なものではありません。撮影そのものは5~6週間に及びました。ご覧の通り、四季全部にまたがっているので、全体で考えると撮影は一年に及ぶものでした。それぐらいの期間がかかったのです。すると撮影の中で、当初の計画以外のことが出てこざるをえなくなります。自然の条件をフォローする必要もありますし、またできるだけ現実的なことを現実のままに再現したいと思う。今日ご覧いただいた作品は、最初にシナリオをもらった時と、もちろん方向性としては同じ道を行っております。しかし映画を撮っているうちに、ほかの方向にもいろいろ試すことができる。例えばこの役柄についてはこうしてみたらどうか、ああしてみたらどうか、そういうことも起こってきます。なので、減らしたことだけではなく、少しストーリーにつけ加えたところもあります。