10/25(日)日本映画スプラッシュ『アレノ』の上映後、越川道夫監督、山田真歩さん(女優)、渋川清彦さん(俳優)、川口覚さん(俳優)をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
Q:撮影で大変だったエピソードを教えてください。
川口覚さん(以下、川口さん):撮影の時に大変だったのは、僕は生きているので湯気が立ってしまい、“湯気待ち”みたいになったことですね。体が冷えるまでずっとならしていたから、よく風邪ひかなかったなと思いました。
越川道夫監督(以下、監督):ここにいるのは湖に突っ込まれる人たちですからね。芝居どころじゃないって。
山田真歩さん(以下、山田さん):カットがかかると、はぁという白い息が、ぱぁっと出て面白かったです。
Q:川口さんの歌はどなたが決められたのですか?
川口さん:あの歌は「ぞうさんとくものす」という、幼稚園児たちがお遊戯の時間に歌う、本当にある歌ですね。作曲者不詳です。僕は撮影で知るまでは知らなかったんですが、幼稚園時代にその歌で遊んだことがある方もいるようですね。
監督:「何か歌を歌うといいよな」という話を脚本の佐藤としていたら、佐藤のお姉さんが幼稚園に勤めているそうで、この歌を以前、別の作品で使おうとして却下になったことがあるらしく、「こんな歌があるんですよ」と。それで、この歌がすごく3人の在り方に合っているなと思ったので、覚えていただきました。
Q:他の皆さんは苦労話は何かありますか?
渋川清彦さん(以下、渋川さん):苦労話というと、やっぱり湖にいるところですよね。あの時、寒かったですもん。上がってから台詞が長いので大変でした。あと、さっきもそこで(作品を)観ていたのですが、ああいう濡れ場というのは、観ていて照れくさいものですね。やり方というか、あまり慣れていないもので、ちょっと苦労しました。あと、前貼りの貼り方とかは苦労しましたね。
山田さん:同じ意見ですね。湖のところとセックスシーンが大変でした。すごく寒くて、湖の中でスタートってかかるのを待っていて、ちょっと意識が遠くなったり。
Q:湖のシーンは何テイクくらい重ねたのですか。
監督:1回じゃない? 都合、3回とか2回とか.。
渋川さん:暗さは大丈夫でしたね。
監督:もう陽が落ちてきて焦って撮ったんですが、全然大丈夫でしたね。
渋川さん:雨で良かったですね。
監督:本当にまっすぐ落ちてくる雨。とにかく初日が寒かったんです。2人が歩いてきて遊戯場の前でザンザン雨が降っているところは、雨降らしでもなく、本当に雨がザンザン降っているだけなんだけど。
Q:本当は晴れのシーンだったんですか?
監督:いや、別に特に決めていたわけではないんですが、結果的にあの雨、良かったなって。何か懐かしい感じがしますよね。ああいう雨があってイルミネーションが光っている。それがフィルムで撮られていると、感触としてすごく懐かしい感じがしますよね。
渋川さん:全体的に懐かしい感じがしないですか? 例えば、俺がビールを飲む動作とか、何か昔見たことあるみたいな感じで。
監督:今の映画じゃないよな。80年代後半の映画みたいだったよ。なんか観ていて懐かしかったな。
Q:先ほど渋川さんが映画をご覧になっていて恥ずかしいとおっしゃっていたシーン、それを観ているシーンもありましたよね。その時の気持ちはどうでした?
川口さん:その時はもう夫としているので。でも、録音の山本が「悲しくなっちゃいました」って。
監督:悲しかったんだな。
川口さん:それはもう悲しくなりました。
Q: 3人が幼馴染で、夫婦と愛人の関係ですが、カメラがまわっていないところで、何か役作りでしたことはありますか? 私は、舞台を観るのが好きなのですが、例えば、恋人同士の(役の)人は楽屋からずっと手を繋いでいると聞いたことがあります。
山田さん:手は繋ぎませんでしたね。
渋川さん:別にこれといって、この感じですよね。
川口さん:僕も手は繋がなかったですね。
監督:リハーサルはしましたね。
山田さん:ベッドシーンのリハーサルを一度だけやりました。服は着たままなのですが、本番でガチガチに決めてやりたくないっていうことで、ゲームのルールみたいに、男が女の背中にキスをしようとするのだけれど、女の人はそれを嫌がるということだけ決めて、自由に動いてみるという練習をしました。
渋川さん:何か動物はこうするみたいなことを言われたような気がするね。髪を梳く時とか。それ以外は何もしなかったかな。役名が男、女、夫だったから、あまり考えずに、あまり作らなかった気がします。越川さんに言われたとおりにやっていたというか、もっと無機質にやっても良かったのかなと、さっき観て思いました。
山田さん:何か役作りしました?入念に。
川口さん:何にもしてないです。
監督:逆立ちをね。
川口さん:逆立ちの練習をしましたね。逆立ちしてほしいという要望があって。
監督:幽霊が出てくる時に、やっぱり逆さに出てこないとなと思って。それは歌舞伎(のアイデア)ですけどね。逆立ちしたまま歩けるかと聞いて。逆立ちの練習をしておいてって。でも現場に行ったら逆立ちするスペースがないんですよ。企画倒れだって言って、逆立ちしないまま出てきました。
Q:逆立ちはできるようになったんですか?
川口さん:3、4秒ですね。
Q:ここでやります?
川口さん:え!いえいえ怖いです!あ、帰る時?
監督:帰る時に逆立ちで歩こうか(笑)あの、50歳になって初監督なので、やってみると80%くらいは企画倒れでした。だから100考えたうち20くらいはやれたことがあって、80くらいは「あっ、企画倒れだ」っていう(笑)。自分で笑ってしまうんですが、面白かったですね。
Q:監督はこれまで数多くの映画に携わってこられたと思いますが、何故いま、監督をやろうと思われたのですか?
監督:僕は行き当たりばったりなので、計画性をもって生きてないです。ただ、ずっと若い頃から映画の仕事しかしたことがなく、この企画自体にも結局1年くらい費やしていて。その中で最終的にこのかたちになって、予算も決まって、自分でやろうと思ったというのが全てです。ここでやらなきゃという気負いは本当になかったですね。映画監督になりたいって思って生きてきたわけでもないので。ただ、若い頃は助監督をやっていましたし、小さな芝居をみんなで作ったりおしていましたから、やっぱりモノを作ることは楽しいですよ。それは、プロデューサーであっても、監督であっても変わらないのかもしれません。この3人とみんなで芝居作るというのは、やはりものすごく楽しいと思いました。
それから、こういうことはあまり言ってはいけないのかもしれませんが、歳をとってくると体にも悪いところが出てきますから、この機会でやらせてもらえてすごくありがたかったなと思います。これからどれくらい仕事をしていけるのかはまだ分かりません。先が見えない、先が見えなくなることが好きなのです。だから、この先の自分の何十年かがよく分らなくなったなという意味で、すごく良い機会をもらったなと思います。デビュー作だと気負っているわけでもないですし、虎視耽々と狙っていたわけでもありません。山田さんありきで始まった企画なので、とにかく山田真歩という女優の可能性をどうしたら広げていけるのかということをたくさん考える時間が、また楽しかったです。答えになっているかわからないのですが。
Q:監督に応える形になりますが、山田さんはどのように可能性を広げてもらいましたか?
監督:とりあえず、湖に浸けるという。
山田さん:こんな風になったということです。越川さんもこの歳になって先が見えなくなることが好きだって言ってましたが、私も「これをやったらどうなるかな」って、ちょっと怖いけれどもやってみたいという気持ちがいつもあるので、そういう面で、この作品は怖いけどやって良かったと思います。
Q:演じている時はカメラの目線とか、人に見られているということを気にしながら演じていらっしゃるのでしょうか?
山田さん:まさにそれが私のテーマというか、私はすごく恥ずかしがり屋なんですね。
前の『楽隊のうさぎ』の時に、うさぎの役をやるということで上野動物園に行きました。いろんな動物を見ていたら、みんな、あられもないポーズで寝ていて、みんなに写メ撮られたりしていて、動物は恥ずかしくないのかなとすごく思ったんです。見られている意識も全くない。
でも大人になると恥ずかしいとか、人の目を気にしたりしてしまうじゃないですか。だから子供や動物にすごく憧れがあって、それでどうにかして、恥ずかしさとか、そういうものを取っ払えないかなと思っていて、「この作品でそれをやらなくちゃ」と思ったんです。今回の役は役名もないし、役作りもないし、欲望とか、自分の内側にあるものだけでやろう、主観だけになろうと思いました。ただ、演技をする時には客観的にやることになるんですが、スタッフの人たちも共演者も監督も信頼しているので、その部分は任せて、「どう見えてもいいから、という感じでやろう」というのが今回のテーマでした。
監督:今日、3人と一緒に初めて壇上に登り、お客さんにも初めて観てもらう機会でした。今のお話聞いていて分かるように、楽しかったですね。みんな真面目にやってるんですが、基本的にはゲラゲラ笑いながら出来ればいいなって思っていて。寒くてそれどころじゃなかったので、あんまりゲラゲラ笑っていた訳でもないのですが。僕はこの3人と、他のスタッフみんなと、どうするこうするといいながら仕事ができて良かったなと思います。僕が監督かどうかはわからないですが、また作品で一緒に遊ぶことができたらいいなと思っています。本当にありがとうございました。