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10/27(火)アジアの未来『俺の心臓を撃て』の上映後、ムン・ジェヨン監督をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
Q:映画の中でこういったタイプの病院には2種類の患者がいると言っていましたが、それは本当でしょうか。
ムン・ジェヨン監督(以下、監督):入ってからおかしくなる人はいないと言われていますが、本当はいるのではないかなと思います。これは韓国のみならず、どの国でも多少あるとは思うんですが、精神的に少し弱い人は、権力を持つ人たちに押さえつけられてしまいます。精神病院だからというだけでなく、どうしても弱いもの、抑圧されてしまう対象になってしまうということだと思います。
Q:実際に監督が病院のリサーチをしたり、医学的な知識を取り入れてこの作品を作られたのでしょうか。ああいった暴力シーンはフィクションですか?
監督:リサーチは私よりもこの小説を書いた作家の方がされたと思います。原作者は元看護師でした。精神病院の中には、完全に閉鎖されている病棟と開放された病棟、この2種類があると思います。映画の中で描かれている病院は、ごく一部の、問題のある病院を舞台にしています。もちろん精神病院だからといって、すべてがこうであるわけではありませんが、実際にこのような病院も存在するということです。こうした病院に対しては政府から支援金が出ます。収容されている患者が良くなってに外に出るよりも、ずっと患者を抱えていた方がお金を貰えるわけです。
Q:この映画では、収容されている患者たちが外に出る過程や、脱出しようとする青年達の気持ちをどのように考えて描かれたんでしょうか。
監督:この映画は精神病院の現実を語ろうというものではありません。精神病院は象徴です。誰もが胸の中に夢を思い描いていると思いますが、それをなかなか叶えられない不条理が世の中にはあります。その夢が叶えられない、束縛がある社会の象徴として描いたのがこの精神病院だと思っていただければと思います。
また、特に精神病院を舞台にした理由は、その世界では関係性がある意味逆転しているなと思ったからです。普通は医者が正常であり、収容されている患者が何らかの異常をきたしているはずなのに、あたかも医者が異常で患者が正常に見えてくる。それがとても皮肉な姿に見えるなと思いました。
Q:出演者の人気を除いて、こういした内容の映画は韓国社会でどのように受け入れられているのでしょうか。
監督:韓国で若者たちがつらい状況におかれているのは事実です。この映画は韓国で上映しても、商業的には決して大きく成功したとは言えません。というのも、実際の社会でも苦労しているので、みんなあえて痛いところを突かれたくない、目を背けたいという心理があるのではと思います。ただ、最近はこういう映画を観ようとする動きもあると思います。
Q:最後の審査会のシーンに出ていた女性が原作者の方ですか?リトル・ビック・ピクチャーズが配給をされていますが、どれくらいの公開規模を確保できていますか?
監督:原作者はその方です。リトル・ビック・ピクチャーズは劇場を持っていませんので、大きな力はありません。それでも継続して配給をしています。だいたい2ヶ月に1度ずつくらいは映画を配給しています。大きくなっている途中ではありますね。
Q:最後に一言コメントをいただけますか。
監督:私が本作を撮って皆さんに披露した時、日本映画みたいだねとよく言われました。私が映画を勉強していた時代、日本映画も好きでよく観ていたので、知らず知らずのうちにその雰囲気が作品の中に出たのかもしれません。そんな日本の映画祭にお招きいただいたことを嬉しく思います。皆さんお忙しい中観に来てくださって本当にありがとうございました。