10/26(月)コンペティション『神様の思し召し』の上映後、エドアルド・ファルコーネ監督をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
エドアルド・ファルコーネ監督(以下、監督):本日は来ていただきありがとうございます。ここは自分にとって別世界ですし、この映画も別世界のことを扱っているにもかかわらず、最後まで辛抱強く観てくださってありがとうございます。
Q:監督がこの作品を撮るきっかけを教えていただけますか?
監督:実は普段は脚本家で、これは初監督作品です。初監督作品として何をしようかと考えたときに、自分がやりたいことをやろうと思いました。精神性ということについて以前から興味があったのと、映画ではあまり語られていないと思ったのでこのテーマを選びました。
Q:監督は脚本というフィールドでコメディ映画をたくさん手掛けられているのですが、実際に監督してみて、難しかったことはありますか?
監督:監督というのは非常に複雑な仕事です。実際に自分で監督をすることになり、いろいろと難しさを感じました。ただ、監督作品を撮り終わってみると、受けも良かったので、自分としてもその結果に満足していますし、苦労は報われたと考えています。ここにネクタイを着けて出てくるのもなかなか難しいことでした。(聞き手である矢田部PDに対して)君は着けていないけど、それじゃいけないよ……冗談ですけれど(笑)。
Q:神父さんは死んでしまったのですか?また、監督さんの中であのお父さんは結局神父になってしまったということなのでしょうか?
監督:この半年間、質問を受けてきて、神父は死んだのかとよく聞かれるのですが、やっぱり答えられません。最後に梨の実が落ちるので、それは神様の答えであって、神父はどうなったかということは観た人それぞれが考えること、オープンな答えです。2つ目の質問については今まで聞かれたことがなかったので、すごくオリジナルなあなたのお考えだと思います。あなたの受け取り方は覚えておきます。素敵なことを言ってくださってありがとうございます。私に(観客賞の)票を入れてください。(会場笑)
Q:障害者の方の真似をするというシーンで、笑う方もいれば、笑わない方もいると思います。障害者の方にどう思われるかということを考慮して作られましたか?
監督:今までそのことに対して言われたことはありませんが、ちょっと不条理なお話かなと思います。もしも気を悪くされたら非常に申し訳ないと思います、あのシーンに関しては、誰かを傷つけるようなことになるとは考えずに撮りました。もちろん、そのことについて考えはしたのですが、そういう風にはならないだろうなと思いました。
Q:アメリカのコメディアン、ラリー・デヴィッドが好きなのですが、主役のおじいさまから似たものを感じました。意識されたことはありますか?
監督:日本ではどうかわかりませんが、イタリアでは彼のようなタイプの医者が多いです。自分は神であると思っているんですね。もちろん医者としては優れているけれども、人間的には疑わしところがあるという、イタリア語ではバローニ(男爵)という呼ばれ方をするのですが、そのような人間がイタリアにはたくさんいる、そういったことに対してのコメディということです。
Q:主役の2人が完璧だと思います。これは最初から理想のキャスティングが実現したのでしょうか?
監督:実は脚本を書いているときは逆のことを考えていました。主役のお父さん役の方(マルコ・ジャッリーニ)に神父を演じてもらおうと思っていたんです。しかし、彼は普段は庶民的な役を演じることが多いので、今回はブルジョワ役にしてみようと。そして逆に、神父役を演じた方(アレッサンドロ・ガスマン)は普段ブルジョワ的な役が多かったので、つまり、お互いに役柄を逆転させてみようと考えました。
Q:アレッサンドロ・ガスマンさんがコメディをやるのはとても意外なのですが、彼にあの役を演じてもらった理由をもう少し詳しく教えていただけますか。
監督:アレッサンドロ・ガスマンは優れた俳優である、というのが選んだ理由です。会った時にはもう彼に頼もうと決めていました。もともと美男の、二枚目として知られている俳優だったのですが、だんだんと成長して、最近とても魅力が増し、この役で非常に評価されていると思います。
Q:お医者さんのお嬢さんが好きな歌手のシーンがありました。曲の歌詞がこの映画のテーマに通ずるものだったかどうか教えてください。
監督:ジジ・ダレッシオという歌手なのですが、とても面白い場面なのに字幕がなくて残念です。あった方が良かったですね。彼はイタリアでは皆が知っている庶民的な歌手で、それをインテリなお父さんが聴いているというコントラストがおかしいという、イタリア人ならすぐにわかる場面でした。
Q:編集でカットした場面や、監督が考えていた違うバージョンストーリーなどがあったら是非観たいです。カットした部分等をDVD化の際に観られるでしょうか。
監督:基本的に、これは脚本が良く書かれた映画だということができると思います。もう一人、非常に優秀なマルコ・マルターニという共同脚本家と一緒に書いた脚本です。脚本の段階から非常に凝縮させ、無駄なものを省いて書こうとしたので、残念ながらDVDにするときもカットシーンなどをお見せできないんです。役者たちもこれだけのものしかなかったので非常に苦労したみたいですが、そういう形でこの仕事は進められました。ただ、私は実生活ではそういう人間ではありません(笑)。
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