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2015.11.12
[イベントレポート]
「少年班の一人としてあの時代を生きたことを、僕は全く後悔していません」ワールド・フォーカス『少年班』-10/27(火):Q&A

少年班

左から 水谷広実さん(作曲)、シャオ・ヤン監督|©2015 TIFF

 
10/27(火)ワールド・フォーカス『少年班』の上映後、監督・脚本のシャオ・ヤンさん、作曲の水谷広実さんをお招きしてQ&Aが行われました。⇒作品詳細
 
シャオ・ヤン監督(以下、監督):東京国際映画祭に参加できることを本当に嬉しく思います。ワールド・フォーカスの部門に選んでいただき光栄です。今日は観に来てくださって本当にありがとうございます。
 
水谷広実さん(以下、水谷さん):実は僕、最終的な完成版というのは今初めて観ます。直前の映像は観ているんですが、「あ、こうなったんだ」とか、「あ、僕の作った音楽こういう感じで表現されたんだ」とか思い、ちょっと感動しました。ありがとうございます。
 
Q:水谷さんはどんなご縁があって、今回のお仕事をされることになったのですか?
 
水谷さん:普段はアニメの仕事が多いのですが、たぶん中国の映画会社の方が曲のサンプルを聴いてくださって、ぜひ一度お願いしてみたいとオファーが来たという感じですね。
 
Q:監督は、水谷さんの音楽を聴いたことはあったのでしょうか?
 
監督:実を申しますと、以前は水谷さんのことをそれほど知りませんでした。私のスタッフが紹介してくれたのが始まりです。曲を聴かせていただいて、特に「夏休み」という曲がとても気持ちよかったんです。例えば学校が夏休みになって、緊張感が解かれてパーっと解放されますよね。その解放感と切なさ、生き生きとした生命力、そういう雰囲気を水谷さんの音楽は持っていて、僕の映画に欲しかった雰囲気と一致しました。それで、水谷さんに作曲をお願いしました。パーフェクトにやっていただいたと思います。
 
Q:水谷さんの方は、中国が舞台ということで今までのお仕事とアプローチの仕方は違いましたか?
 
水谷さん:打合せのときに僕もそれが気になって、中国っぽいメロディーを意識した方がよいのかという質問をしたのですが、むしろそこは意識しないで、いつもの水谷でいってくれというオファーをいただいて、とても仕事はしやすかったですね。
 
Q:ダーファという男の子について、彼は占いなどをやっていてとても不可思議な少年ですが、ああいう人物が実際、少年班の中にいたのでしょうか?モデルになった人はいるのですか?
 
監督:ダーファは、僕の同級生の中に実際にいた人物をモデルにしています。ワン・ダーファというのは彼のニックネームでした。彼は退学して哲学を学びにいったのですが、消息が途絶えてしまいました。その後、農村に帰ってアヒルを飼っているという噂を聞きましたが、僕らの前には姿を現さなくなりました。彼は当時本当に数学の成績が優れていて、易経、八卦などに長けていました。今で言えばコンピューターに通じるようなものがありました。
 
Q:現在、中国で少年班は存続しているのでしょうか?
 
監督:以前は25ヶ所くらいの学校に少年班が設けられていましたが、現在では2ヶ所に縮小されています。そのうちの一つが、僕の卒業した西安交通大学です。僕自身も少年班の学生でした。1994年、15歳の時に試験に合格して入ったわけです。
 
Q:水谷さんはこのシステムをご覧になったとき、どう思いましたか?
 
水谷さん:当然、僕は最初に打ち合わせをするまで知りませんでした。いわゆる飛び級というやつですよね。僕自身がそんなに頭の良い学生生活を送っていなかったので、「天才の方と仕事するんだ」というのが正直な感想でしたね。(笑)
 
Q:おそらくウー・ウェイに監督ご自身を反映させているのだと思いますが、ご本人にお会いしたらファンの方がご自身なのかと思いました。
 
監督:すごく観察眼の鋭いお客様ですね。確かに僕自身を反映させられているのはウー・ウェイなのですが、外見はファンに近いですよね。
 
Q:先生のチョウ・ジーヨンの名前は、自分が凡庸であることを知っているという意味を意識していると思います。他のキャラクターの名前にも象徴的な意味があるのでしょうか?
 
監督:確かに先生のチョウ・ジーヨンは、自分が凡庸であることを知っている人間であり、名前にそういう意味を持たせてあります。自分が凡庸であることを知っているからこそ、頭の良い少年を集めて、かつて目指していた理想を子供達に成し遂げさせようとする、そういう意味合いを持たせてあります。そして次のウー・ウェイ。実はウェイというのは中国語の漢字で“恐れる”という意味があるんです。ウーは“ない”という意味なので、“恐れない”という意味をかけてあります。彼は元々とても臆病な少年でしたが、最後には非常に勇気を振り絞って生きていきますよね。そして、ワンター・ファーはもともとそういう名前でした。それから、チョウ・ランは僕がかつて好きだった女の子の名前です。
 
Q:最後にチョウ・ランがウー・ウェイの乗ったバスを追いかけていきますよね。あそこで彼女はどんな気持ちなんでしょうか?
 
監督:チョウ・ランがバスを追いかけていくシーンは、単純に後悔の念とかそういう想いではありません。ウー・ウェイは少年班の中で最初はとても出来が悪くて、おどおどしているような少年でしたが、段々強くなって、最終的には一番勇気のある行為をしたわけです。だから自分に向き合うことが出来たんです。勇気を振り絞ってそういう気持ちになれたということ、人間として生きるためには自分に向き合わなければいけないんだということを、このバスを追いかけるシーンで、人間の成長の過程を表現したかったんです。
 
Q:水谷さんは特に思い出に残っているようなシーンはありますか?
 
水谷さん:初めに作ったテーマというか、放送室で先生がみんなに自分の想いを伝えるという、あの曲を作ったことで映画の全体的なものが出来上がったので、一番思い入れがあります。
 
Q: この作品の中で、男の子達は感情を言葉で露わにしますが、女性二人の感情が読みづらいところがあります。これは監督の思春期が勝手に反映されているのでしょうか。ランとイーリンの感情描写をどうお考えですか?
 
監督:まずはチョウ・ランについて。彼女はとても賢い女の子なので、マイクがとても好きなのにそれを絶対に言えないんです。なぜかというと、マイクがチョウ・ランのことを好きではないというのを知っているからです。絶対に言えない。もし好きだと言って拒否されたら、自分のプライドがものすごく傷つきます。そのことを彼女は察知していて、悲しい思いをしたくないので、なかなか言い出せないわけです。
 
次に綺麗なイーリンについて。彼女の存在を、僕はこの少年班の少年達と両極面に対比して置きました。少年達はまだ子供ですが、彼女はすでに大人になっている。マイクはとてもかっこいい少年ですが、まだ君は子供なんだよ、大人になってないんだよということで相手にしてもらえない。イーリンが好きなのは、自分と同じ年齢の普通の男性なんです。
 
良い質問をいただいたので、ここで当時の実際のエピソードをお話ししたいと思います。僕が15歳で少年班に入ったときのことです。大学ですから、劇団とか映画クラブとか、そういうサークルがいっぱいありました。その中には素敵な女性の先輩がいて、僕も入りたいと言ったらどうぞいらっしゃいと言ってくれたんです。その素敵な女性が、君は何学部の何期生?と聞いてきて、94年に入った少年班ですと言ったら、「あら坊や、膝にいらっしゃいよ」と言われて、それは僕にとってとてもショックなことでした。相手にされてないんですね。
 
Q:監督は、少年班を出られて、そのシステムについてどう思われていますか?
 
監督:少年班の中ではマスコミ関係で仕事をしている人が結構多いです。例えば、テレビのキャスターやディレクターになっている人もいますが、映画の監督は僕一人だと思います。実は、僕はウー・ウェイと同じで全然成績が良くなかったんです。少年班に入ったのもまぐれみたいなもので、成績も抜群というわけでもないのに、家族が「受けてみたら?」と言うので、たまたま受けてみたら受かったわけです。他の少年班の同級生達は全校一位とかの頭の良い人ばかりだったんです。その中で、僕はわりと文芸関係に興味を持っていましたが、他の同級生達は将来科学者になりたいというような人がほとんどでした。
 
Q:少年班で飛び級をされてよかったと思いますか?
 
監督:今から少年班時代を振り返ると、友達に恵まれましたし、楽しいときを過ごせたと思います。先生達もとても素晴らしい方達でした。ただその後、上の学校に行くと少年班出身だということで異星人を見るような目で見られるということがありました。この少年班という教育体制がどうなのかという問題は、いろんな面から科学的に討論していく必要があると思います。僕が言えるのは、少年班の一人としてあの時代を生きたことを全然後悔していないということです。良い少年時代だったと思います。

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