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2015.11.02
[インタビュー]
「私の映画ではリアリティを感じて欲しい。娯楽ではなく、ある種の人生を経験したと受け取ってもらいたい」-公式インタビュー:CROSSCUT ASIA「ブリランテ・メンドーサの世界」

Brillante Ma Mendoza

アーロン・リベラさん(左)、ブリランテ・メンドーサ監督(右)
©2015 TIFF

 
国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA ♯02熱風!フィリピン
ブリランテ・メンドーサの世界 公式インタビュー
ブリランテ・メンドーサ(監督)
アーロン・リベラ(俳優)

 
昨年好評だったタイ映画特集に続く、CROSSCUT ASIAの第2弾「熱風!フィリピン」。ハリウッドに毒されず、自分たちの社会や文化を自分たちの視点で捉えた意欲的な作品が並ぶなか、ドキュメンタリー・タッチの荒々しい映像で人間と社会を鷲づかみにするブリランテ・メンドーサ監督の作品群は、ひときわ異彩を放っているといえるだろう。新作に『アジア三面鏡』が控える監督と、常連俳優のリベラさんに映画について語ってもらった。
 
──人間の存在を根底から見つめる作品で知られていますが、それは自身の生きてきた経験に由来するのでしょうか?
ブリランテ・メンドーサ監督(以下、メンドーサ監督):デビュー作『マニラ・デイドリーム』(05)の時は、商業映画で扱わないストーリーを撮りたい、リアリズムを追求したいという思いだけでした。もちろん、リノ・ブロッカを始めとする、偉大な先達の存在は知っていましたが、社会性を打ち出し、問題提起するという意識はありませんでした。ただ、海外の映画祭に行って観客の皆さんに対面すると、フィリピンの文化や暮らしに関する質問をよく受けます。そこで自国の文化を理解して、社会に目を向けるようになりました。
 
──監督になる前はプロダクション・デザイナーをされていて、いまも自身の作品では、ダンテ・メンドーサ名義で美術監督を務めています。デザイナーの経験は、監督をする上でも役に立ったと思いますか?
メンドーサ監督:大いに役立ちました。例えば、テレビCMはたった30秒の世界だから、凄くディティールにこだわって作っていきます。こうした経験から私もディティールにこだわりながら、美術セットや演出を手がけています。どれだけ作り込んでも、その痕跡を見せないことが大切です。
 
──初期には凝ったカメラワークも見られましたが、しだいに被写体に肉迫する荒々しいタッチになっていきました。撮影手法の変化は題材と関係があるのでしょうか?
メンドーサ監督:よりリアルに撮るために変化していきました。映画を作るようになって、もし観客として自分の映画を観るならリアリティを感じてほしい。娯楽とは受け止めてほしくないと思いました。このことを深く自覚するに至って、観客は私の映画を観てあるいは個々の作品を通して、ある種の人生を経験したと受け止めてほしいと感じるようになりました。
 
──撮影のオディッシィ・フローレスやクリエイティブ・コンサルタントのアルマンド・ラオは、監督の製作スタッフの常連です。同じスタッフと長年映画を作り続ける秘訣はなんでしょう?
メンドーサ監督:スタッフとは特別な関係を築いているし、俳優たちとも同様です。俳優でもスタッフでも同じ目的を共有し、作品の意図を理解してもらうことが必要です。
撮影監督にはフレームとショットの狙いを伝えます。華やかなルックは私の好みではなく、心底リアルに見えるように撮りたい。自然光とリアリズムへのこだわりを共有しながら、仕事を進めていきます。ストーリーの面で私の映画で重要なのは、「ファウンド・ストーリー」というメソッドです。これはハリウッドの商業主義映画の対極にある方法です。実際の生活に密着したメソッドで、ストーリーがキャラクターの周辺で交互に展開していきます。どこにどんな人物が属し、どういう生き方をしているかという環境を重視します。アルマンド・ラオは私の師匠であり、彼から多くを学んでいます。
 
──現代では複雑な展開の作品が多いけれど、監督の作品は常にシンプルです。
メンドーサ監督:できるだけシンプルなストーリーを作るようにしていますが、そう簡単ではありません。脚本の上で実現できたとしても、映像化して達成するのは難しい。その意味でいえば、私のすべての作品は完成していても完結したとは言えないものです。つまり、私の映画づくりとは、完璧なリアリズムを追求する旅路なのです。それを達するのは容易ではなく、むしろ達成できない目標なのかもしれません。でもつねに学び、成長して、同じ過ちを2度と起こさないことを念頭に作品づくりに取り組んでいます。
 
──アーロン・リベラさんは14歳で『マニラ・デイドリーム』に出演して以来、全部で6本のメンドーサ監督の作品に出演しています。自身の成長と照らして、監督をどう理解されていますか?
アーロン・リベラ(以下、リベラ):監督の作品に出演して、その作品を観ることで、人生を学びました。人生は完璧ではない。だからこそ、何が起きても乗り越える柔軟性が必要であり、常に感性を研ぎ澄ませてより良い人間になることを教わりました。6本の映画に出演しただけではなく、僕の人生の約半分はメンドーサ監督とともにありました。
 
──『罠(わな)~被災地に生きる』ではメインキャストのひとりとして、両親を亡くした一家を担う重要な役を演じていました。
リベラ:この作品は僕にとって、非常に大きな意味を持っています。これまでに比べて役が大きいというだけではありません。役に入り込んでしまい、あるシーンを撮り終えたとき、涙がこみ上げてきました。どんどん追い詰められていく役柄に自分でもヘトヘトになり、こんなに苦しんでも立ち上がって生きていくしかないのかと、被災した方々に思いを馳せました。
 
──最後に、国際交流基金アジアセンターと東京国際映画祭が共同プロデュースするオムニバス映画『アジア三面鏡』についてお聞きしたいと思います。映画祭の期間中に、行定勲監督、ソト・クォーリーカー監督と3人で打ち合わせをされたそうですが、現段階でお話できることがあればお聞かせ下さい。
メンドーサ監督: 3人のパートにつながりをもたせること。その上で、それぞれを1本の作品として成立させるという困難に取り組んでいます。キャラクターの面ではよい方向性を見つけました。私のストーリーの主人公は老人になるでしょう。あと、互いの国に共通する見慣れた動物として鳩を登場させる予定です。
どのパートが最初で、どれが最後に来るかということは、映画全体の印象を形成する上で大変重要な要素です。私の作品はリアリティを追求しているので、いちばん最初に来るべきだと自分では考えています。観客が落ち込んでしまうかもしれないから最後はまずいんじゃないかと(笑)。
(取材/構成 赤塚成人)
 
「CROSSCUT ASIA ♯02熱風!フィリピン ブリランテ・メンドーサの世界」
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