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2015.11.12
[イベントレポート]
「ウー・ティエンミン監督に、皆さんが映画をもう一度観に来てくれたということを伝えたいです」ワールド・フォーカス『古井戸[デジタル・リストア版]』-10/24(土):Q&A

古井戸

写真中央:ウー・ヤンヤンさん(製作/ウー・ティエンミン監督のご令嬢)、写真右:リュイ・リーピンさん(女優)|©2015 TIFF

 
10/24(土)、ワールド・フォーカス『古井戸[デジタル・リストア版]』の上映後、ウー・ヤンヤンさん(製作/ウー・ティエンミン監督のご令嬢)、女優のリュイ・リーピンさんをお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
ウー・ヤンヤンさん(以下、ヤンヤンさん):私は日本に来たのは多分6回目です。実は第2回(1987年)の東京国際映画祭でウー・ティエンミン監督が『古井戸』を上映する時にも来まして、私はあの時初めて作品を観たんです。観客席で皆さんと一緒に映画を観て、これは成功だと確信しましたし、自分でも大変感動しました。
 
今回はウー・ティエンミン監督を偲んでというテーマで映画を上映してくださるとのことでとても感動しております。監督に、皆さんがティエンミン監督の映画をもう一度観に来てくれたということを伝えたいと思います。皆さんと一緒に監督との思い出、それからこの作品の思い出を一緒に振り返りたいです。どうもありがとう!
 
Q:ヤンヤンさん、お父様が最後に出演された作品『グォさんの仮装大賞』(TIFF上映タイトル『老人ホームを飛び出して』:25回(2012年)TIFF出品)ではスキンヘッドで非常にコミカルな役柄でしたが実際のお父様ウー・ティエンミン監督はどんな方だったんでしょうか?
 
ヤンヤンさん:普段もあの役柄のままでユーモアがあって本当に楽観的な人でしたね。目の前にどんなに大変なことがあっても絶対に負けない人でした。
 
Q:リーピンさん、『古井戸』の撮影中ウー・ティエンミン監督の演出や俳優指導はいかがでしたか?
 
リュイ・リーピンさん(以下、リーピンさん):私はこの『古井戸』のスタッフとクルーを、非常に懐かしく思い出します。ウー・ティエンミン監督は大変リーダーシップがある方で、監督としてはもちろん、役者としても素晴らしいのです。なによりも大変快活な人で、私は今でもこのクルーを覚えています。貴族のクルーと呼んでいたのですが、どうしてかというと食事がよかったんですね。あの時代に農村ではなかなかいいものを食べられなかったのですが、監督は必ず週1回すごくいい食事の日を作って、皆においしいものを食べさせてくれていました。それから当時、中国ではいわゆるソフトドリンクというものがなくて。私は飲んだことがなかったのですが、必ず毎日、健康ドリンクを1本配給して飲ませてくれました。私自身も健康ドリンクってこういうものなんだと思いました。監督自身もこの映画に出演していますが、彼以外にあの役はできないのではないかと思います。生活に関する観察がすごい方だったと思います。
 
Q:ヤンヤンさんは『古井戸』の撮影中に現場に行きましたか?
 
ヤンヤンさん:当時はまだ学生でしたが、私がとにかく恵まれた生活をしているから、社会の現実を、社会にはこんなところがあるんだよというのを知りなさいと。それで、撮影現場に来いと言われました。撮影した場所は中国の中でも相当に貧しい村でした。私は今でも覚えているのですが、朝起きると体中ノミに噛まれていたり、リュイ・リーピンさんもおっしゃっていましたが、当時としてはすごくいいものを食べていましたので、私たちが食事をしていると、白いご飯の周りを、土地の農民の人たちが取り囲んで見ていたのを覚えています。私はそれを日記に書きました。自分の生活はどれだけ恵まれているのか、それを大事にしなきゃなと思いました。
 
また、あの土地は本当に水がありませんでした。水が無いところですから、そこの人達がたらい一杯の水を色んなことに使うんですね。朝起きて顔を洗い、野菜を洗い、洋服も洗い、夜、寝る前に足を洗うという中国人の風習に使い、その後も捨てずに、やっと最後にその水を畑に撒くのです。
 
それから私が覚えているのは、村のおじいさんが十数キロの山を登って桶で汲んでくるのですが、二つの桶で天秤みたいにしていたのに、自分の玄関の前に来たとき、転んで水をこぼしてしまいました。そしてそのおじいさんが大泣きしていたのを覚えています。この映画が、中国で第一回監督協会賞を受賞した時に、賞金として当時のお金で約十万円をもらいました。父はこれを自分ではなく、この村に捧げたいと。村に道路を作る費用にしてくださいと寄付しました。数年前にこの村に行ったのですが、村の入り口に「私たちの命の恩人ウー監督、ありがとうございます。」という歓迎の垂れ幕がかかっていました。
 
Q:村同士の対決のシーンなどに登場したエキストラは、実際に村の人達なんですよね?何か面白いエピソードがあれば披露してください。
 
リーピンさん:村同士の決闘のシーンでしたが、エキストラの村の人達に演じてもらいました。最初は棒を持っても全然違うところに振り回すだけで全然決闘らしくなかったので、監督がもっとそれらしくやれと言ったんです。そうしたら、やっているうちにだんだん本気になってしまい、収拾がつかなくなってしまいました。かなり本気になっていたのでそれらしく撮れましたが、小さな怪我をした人もいたみたいですね。本当の決闘シーンになってしまったのです。あとは、羊が人間の水を飲んでしまうシーンがあったと思うのですが、監督が本当に羊に何日か水を飲ませなかったのです。あのシーンは本当に羊が水をとって奪ったので、凄くリアルに撮れました。
 
Q:共演者に、現在は巨匠監督になったチャン・イーモウさんがいらっしゃいますね。撮影監督と出演という肩書きですが、現場では両立していましたか?
 
リーピンさん:主役がチャン・イーモウさんだと聞いたときに、なんでカメラマンが主演なんですか?と監督も伺いました。そうしたら監督が、雰囲気が非常にそのものだと、この役柄そのものだと。非常にリアル、人間としてもリアルだと言いました。監督はやっぱりさすがだなと思ったのが、ティエンミン監督はすごく演技のことをわかっているんです。他の監督では演技指導ができない人もいますが、ティエンミン監督は本当に「この人なら」と思った人をキャスティングして、演出をするので、ものすごく的確なんです。私たち役者も監督に任せておけば大丈夫と信じていましたね。
 
カメラマン助手がジョブン・サイさんという人でしたが、チャン・イーモウさんが演技しているときは彼がカメラオペレーターをしていました。カメラマン、役者を含めた合同ミーティングをして、カメラの位置からなにから全部話し合いました。助手の人も段取りが全部わかっていて、カメラマンのチャン・イーモウさんが事前に全て準備して助手に預けるので、問題はありませんでした。そんな動きを見越したティエンミン監督はすごいなって思います。現場でみんなのそれぞれの才能を発揮させることが出来る人でした。
 
Q:大きな事故が起こった後で、亡くなった方のお母さんが井戸から垂れるロープに赤いリボンのようなものを結んでいくシーンがあります。あの赤いリボンにはどういう意味がありますか?
 
リーピンさん:(演出意図の)確信は無いのですが、私が見て感じたのは、ああいう危険なことが二度と起こらないようにという気持ち、赤い色は祝福、あるいは命の象徴なので、命を落とすような事故が二度と起こらないようにという気持ちの表れなんじゃないかな、と思います。
 
Q:ヤンヤンさんはお父様の名前をつけたファンドをつくって若い監督たちを応援しているそうです。PRをお願いします。
 
ヤンヤンさん:中国電影基金会 呉天明青年電影専項基金というんですけれども、これは私の父が亡くなったときに中国電影基金が作りまして。若い監督を応援すると共に、若い監督にウー・ティエンミンの精神を受け継いで、才能のある監督たちに中国映画を引き続き撮ってほしいという、そういう思いを込めて作った公益団体です。
 
Q:リーピンさんから最後に一言いただけますか。
 
リーピンさん:本当に、『古井戸』それからウー・ティエンミン監督を懐かしく思います。監督は本当にめったにいない人柄でしたね。今の中国のベテラン監督たちを育てたと言ってもいい監督です。例えばティエン・チュアンチュアン、チャン・イーモウ、にチェン・カイコー。彼らが一番いい時期に力を発揮できたのは、実はウー・ティエンミン監督がいたからなのです。ウー・ティエンミン監督は自分の映画製作だけではなくて、若い人達を育て、そしていい作品を撮らせていました。本当にウー・ティエンミン監督に敬意を表したいと思います。それからこの『古井戸』という映画、当時の舞台をこれだけリアルに描いた中国映画は出て来ていないと思います。この映画は若い作家にとって、一つの目標ともなる作品なので、この基金がぜひ若い監督を育て、その若い監督がこの映画を越える作品を製作することを祈っています。

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