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2015.10.30
[イベントレポート]
「今回みなさんと映画を観て、「そういうことだったのか」とわかったことが一つあります」アジアの未来『少年バビロン』-10/23(金):Q&A

少年バビロン

左から岩井俊二監督、シアン・グオチアン監督、リー・モンさん
©2015 TIFF

 
10/23(金)アジアの未来『少年バビロン』の上映後、シアン・グオチアン監督、リー・モンさん、岩井俊二監督をお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
Q:シアン・グオチアン監督、そしてヒロインを演じた女優のリー・モンさんです。そして今日はなんと岩井俊二監督が駆けつけてくださいました。一言ずつご挨拶をいただけますか。
 
シアン・グオチアン監督(以下、グオチアン監督):始めて東京に来ました。そして初めて撮った映画で東京国際映画祭に来ることができました。監督のシアン・グオチアンです。よろしくお願いします。 
 
リー・モンさん(以下、モンさん):前に東京国際映画祭に来たことはありますが、初めて参加作品の女優として来ることができました。とても嬉しく思っています。
 
岩井俊二監督(以下、岩井監督):実はリー・モンさんがお友達で、よく上海に行くときにお世話になったりしていました。で、東京に来たときにご馳走してあげたりと、交流があります。今日は上映を観にきました。
 
モンさん:岩井監督に是非この映画を観てご指導いただきたいと思いまして、お声がけしました。
 
Q:まずはグオチアン監督、今日はこちらで映画をご覧になっていかがでしたか?
 
グオチアン監督:実は始まってから10分くらい遅れて入ったのですが、皆さん笑ったり反応してくださっていたのでとても慰められました。
 
Q:岩井さんはいかがでしたか?

岩井監督:そうですね、すごく面白い映画だと思います。最初の爆発から、リアルな話なのか、ファンタジーなのか最初戸惑いました。中国のどの辺りの工場地帯だったのか教えて欲しいです。
 
グオチアン監督:舞台にしたのは山東省のチンタオです。国営工場の様子というのは中国のどこの都市にもあるような感じです。
 
Q:リー・モンさんはこの作品にどうして出演しようと思われたのですか?
 
モンさん:最初に第一稿の段階の脚本を読み、大変文章が面白いと思いました。しかも本当にファンタジックな部分があって、これは面白い映画になるのではないかと思って、是非監督に会いたいと。それからプロデューサーに紹介されて監督に会ったのですが、彼が私のことを買ってくださったのもあり、ネット上で原作を読みました。これはルー・ネイという人が書いた同名の小説で、とても面白いので、こうして映画のかたちになったのを観ることが出来て嬉しいです。しかもその小説はルー・ネイの処女作で、この映画もまたグオチアン監督の処女作であるわけです。
 
Q:監督がヒロインにリー・モンさんを起用したいと思ったのはどうしてですか?

グオチアン監督:
実は原作がかなり長くネットで広まっていて、人気がものすごく、小説のファンがたくさんいました。映画化するときに原作者と私が一番頭を悩ませたのが、このバイランというヒロインを誰に演じてもらうかということでした。小説での22歳という年齢になるべく近い女優さんをと探したのですが、なかなか出会えませんでした。たまたま『罪の手ざわり』という映画にリー・モンさんが出ていて、彼女の役の表現力にとても独特なものがある、それから見た目もとても個性的だと思ったので、バイラン役にぴったりなのではないかと、「彼女だ」と思ったら、他は考えられなくなりました。
 
Q:岩井さん、「ご指導お願いします」とリー・モンさんから言われていましたが、ご覧になって彼女はいかがでしたか?
 
岩井監督:女優さんとしては非常に独創的な雰囲気を持っていて、僕もいつかお仕事したいなと思っていいます。スクリーンのなかにいると改めてすばらしい笑顔だと思いましたね。
 
モンさん:ありがとうございます。私も是非岩井監督の作品に出させていただきたいです。
 
Q:役作りで難しかった部分はありましたか。
 
モンさん:この映画の中では、やはり彼女のクールな感じを出すのが難しかったです。実は普段の私は割とキャピキャピしているので。シーンとしては、雨のなかで主人公の工場の師匠がけがをするシーンがあったのですが、かなり大変で一週間ぐらいかかりました。一週間といってもずっと続けて撮っているわけではなく、何回かに分けて撮ったトータルで一週間です。だから気分も続かず、同じ感情になるのがとても難しかったです。それから相手が自分より3~4歳若い男の子で、彼にそんなに積極的な愛情を示すわけではないけれど、嫌いというわけでもないという、情感を抑えるところ。バイランは成熟した女性だから、自分の将来や、自分が何をしたいかということがわかっている。それに対してルー・シャオルーはまだ若い工場労働者なので、彼とはなかなか一緒になれないという気持ち。それを出すのが難しかったです。あとはベッドシーンで、セックスしているのだけど地震が起こるというのが難しかったです。監督に、私と相手役の彼との恋や愛というものを、どのように理解していたのかを聞きたいです。
 
グオチアン監督:私はこの脚本を百回近く読みましたが、今回みなさんと映画を観て「そういうことだったのか」と分かったことが一つあります。男の子がずっと「成長したくない、成長したくない」と思いながらも、成長せざるを得ない環境(工場)に行く。彼は自分が実現できないような夢を追い求めていたわけですが、それは成長したくないということだと思うのです。それと、バイランという女性がやはり彼には手に入れられない女性だという部分、そこが実は一致しているのではないかと。その分裂している彼の気持ちとか、一生かかっても追いつけない、触れられない存在だということ、それは汽車を追いかけるシーンに出たなと思っています。
 
Q:皆さんもたくさん笑ってくださっていて、お風呂我慢対決のシーンが私も大好きなのですが、あれは女の人が見ると「何をやっているのだ」と思うのではないでしょうか。男の子としては理解できる心情ですか?
 
岩井監督:あれは本当に女の子がいるとやらかしちゃいますよね、男子っていうのは。
 
Q:岩井さんだったら勝てる自信ありますか?
 
岩井監督:ないです。温泉行っても30秒ぐらいで出ちゃうので。勝ち目ないですね。
 
Q:よくある日常も、見方を変えれば面白いことがいっぱいあるのだなということに改めて気づきました。監督が作品に込めた思いはどのようなものですか?
 
グオチアン監督:そうですね。「もうこれは終わる」という恋は、どんなにどんなに引きとめても無駄であると思うので、だから別れのシーンはより傷つく、そういうシーンにしたかった。これは彼の人生においても本当に傷となって、永遠に忘れられない別れになった、というのがあのシーンだと思います。
 
Q:当時の中国の状況というのは、監督としてはどういう社会だったと捉えているのかをお尋ねしたいです。
 
グオチアン監督:実は、原作小説が私を感動させたのはそこです。つまり、大工場のなかの描写が非常に面白く貴重であると感じました。あの時代の中国というのは日本とはまったく違いまして、要するに集団経済です。生まれたときに自分の親がどうかということで一生が決まってしまうので、ルー・シャオルーは親がふたりとも普通の工場労働者ということで、自分も一生工場で暮らすしかないというように決まっています。そういう人達ですから、当然仕事にも熱心になれるはずがなくて、とにかく一生工場で食いつぶしていくしかないという生き方をしている。それに対して、バイランはそういう生き方をしたくない、でも周りはそういう人たちばかりという状況で、自分にとって価値のある恋愛、価値のある生き方を見つけようとしています。また、原作者自身の90年代に対する見方には、別の悲惨な面もあります。90年代は中国の政治体制が大きく変わったので、あのような大工場がたくさん倒産して、それまで暮らしていけた人達がみんな失業して落ちぶれて、自分でなんとか生きていかなければならないという状況に追い込まれていくという、それに対する視線が小説にはあります。
 
Q:岩井さんが感じる中国映画のイメージ、印象はどういう感じですか?
 
岩井監督:向こうも本当にすごいですよ。ハリウッドを追い越すぐらいの勢いで、ものすごくたくさんの映画が作られて、劇場の館数が何万スクリーンとかあるんですよね。名作もいっぱいあると思うし、アート映画も面白いもののがいろいろあります。台湾勢など、なかなかいい監督さんも多いし、ぜひ台湾といわず中国全体にそのエネルギーを、そして僕らもあやかり、よい関係であり続けたいなと思います。僕の友だちも、特にアジアのフィルムメイカーたちはこの東京国際映画祭をすごく愛してくれていて、日本人より愛してくれているんじゃないかと思うくらいよく話に出てきますね。そういう面においても我々日本勢はアピールが弱いかもしれません。本当にこういう場をずっと続けてもらいたい。きっとすごく優秀なオペレーターの人たちがそのような映画を集めて上映していると思うので、末永く続けてほしいなと思います。
 
Q:リー・モンさんにお聞きします。岩井さんの映画をはじめ、日本映画の中国での影響や人気はいかがですか。
 
モンさん:日本の映画もテレビも中国に大きな影響を与えています。特に青春もののジャンルでは、一番初めに中国が日本の真似をしました。ドラマでは「東京ラブストーリー」、映画なら『ラブレター』。『ラブレター』はたぶん私達の一番最初の青春映画だと思います。グオチアン監督は黒澤明監督がお好きだということですし、私は今村昌平監督、小津安二郎監督がすごく好きです。だから本当に日本の文化は中国の深いところで影響を与えています。私は毎回日本に来るたびに日本の文化、特に日本人のマナーに本当に感動して、なにかちょっと生まれ変わるような気持ちになります。そして、昨年高倉健さんが亡くなったときに、中国人みんながその死を惜しみました。
 
Q:グオチアン監督は、宮﨑駿監督のアニメがお好きなのですか?
 
グオチアン監督:私は特撮などもやっているので大好きです。是非ジブリのスタジオに行きたいと思っています。一番好きなのは『となりのトトロ』です。雨のなかでサツキとメイがバスを待っていると猫バスが来るシーンは何度観たか分かりません。私はもともと漫画を描いていて、それからアニメをやり、その後に北京大学で撮影を勉強しましたので、アニメはすごく好きです。岩井監督の『リリイ・シュシュのすべて』、2001年に5人の仲間と夜中から朝の6時まで何度も何度も観てすごく感動しました。

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