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『地雷と少年兵』
マーチン・ピーター・サンフリト(監督)
ローラン・モラー(俳優)
マイケル・クリスチャン・ライクス(プロデューサー)
第2次世界大戦終結後のデンマークの海岸地帯を舞台に、ナチスがばらまいた地雷を撤去するドイツ少年兵捕虜たちと、彼らを監視するデンマーク兵士との緊迫した日々が描かれる。この知られざる史実を、監督のマーチン・ピーター・サンフリトがリアルに映像化。デンマーク兵士に扮したローラン・モラーの迫真の演技もこの映画の見どころだ。東京国際映画祭には、プロデューサーのマイケル・クリスチャン・ライクスさん、先の男優モラーさん、そして監督の3人での来日となった。
――この作品の成立までの経緯をお教えください。
マーチン・ピーター・サンフリト(以下、サンフリト監督):デンマークでありがちな作品とは違うものを撮りたいと思っていました。国を良く見せアピールする映画ばかりが多いのですが、良いところばかりではないのは誰もが分かっていること。暗い側面が必ずあるだろうと調べていくうちに、この題材をみつけました。
――あまり知られていない事実なのですね。
サンフリト監督:この出来事は歴史の教科書や書籍に書かれていなくて、地雷の撤去にについてよくよく調べていくと、実はドイツ人が撤去していることが判明し、さらに突き詰めていくと、撤去していたのは少年だったことが分かってきました。墓を訪ねたり、病院を訪問したりするなど、足で調べた情報をつなぎ合わせて全貌が明らかになりました。
数字というのは嘘をつきません。200万個の地雷を2000名の兵士が撤去して、これほど子どもたちが関わっており、そしてそのうちの大半は地雷によって吹き飛ばされてしまったのであろうという推測が成り立ちます。
――監督を中心としたチームがこの事実を明らかにしていった。脚本前の作業ですね。
サンフリト監督:脚本を書き上げるのに3年半かかりました。事実が少しずつ分かっていったので、書くのに長い時間がかかりました。
――脚本づくりですが、事実をもとにしたフィクションとして、ストーリーをどのように構築していきましたか?
サンフリト監督:ドイツ人捕虜の扱いがあまりにひどいと、政府に進言した当時の兵士の手紙が残っていました。その内容を政府が聞き入れることはなく、彼は追放されました。映画はフィクションではありますが、なかで表現されている事柄はすべて事実として起きたことです。食事が与えられなかったこともまた事実です。
――息が詰まるようなすごい緊張感で話が進んでいくのですが、最後に希望が残ります。
ローラン・モラー(以下モラー):そうです。私がヒーローになりたかったのです(笑)。
サンフリト監督:悲しいストーリーには何かしらの救いが必要だと考えています。今回この作品に関して責任を追及するのではなく、変化しなくてはならないということを示す映画だと思いました。太陽の下の撮影を貫いたのは、少しでも詩的な感じを表現できればと考えたからです。救いのない結末にしたら、あまりにも悲しすぎると思いましたから。
――キャスティングはどのように決めたのですか?
サンフリト監督:少年たちは基本的にはほとんどアマチュアですね。彼らを、自分がどの役をやるのか分からない状態で集めて、同じ部屋で観察しながらキャスティングしていきました。演技を指導するというよりは、ガイドするというかたちでした。
モラー:監督は最終的に欲しいシーンは頭の中にあるのですが、その過程は俳優に任せます。僕としては演じやすかった。デンマークには優秀な俳優はたくさんいますが、私を起用してくれました。信頼しているので安心して演じることができました。
――この作品はご自身のなかでどういう位置づけの作品になると思われますか?
サンフリト監督:たぶん、私の作った作品のなかでこれが最高の映画になっていると思います。映像も音楽もストーリーも全て気に入っていて、すべてが融合されて花開いたという感じです。
――プロデューサーの視点から、この作品についてどのようにお考えですか?
マイケル・クリスチャン・ライクス:私自身、監督がリサーチを始めたときから企画に関わっていて、かなり早い段階から内容について分かっており、監督がこのテーマを扱うことによって、さらに進化できる機会でもあると思っていました。たぶんどんなプロジェクトでも「これは絶対イケるな」と思うときがあって、このプロジェクトはまさにそうでした。ですので、最初から全く疑っていませんでした。
サンフリト監督:デンマークは映画をサポートするシステムが優れてはいますが、それでも製作費をすべてまかなえるわけではありません。マイケルはあちこち奔走し、クラウドファウンディングなどを使って資金を集めてくれました。政府のお金は本当に一部です。映画って本当にお金がかかるんですよ(笑)。
(取材/構成 稲田隆起 日本映画ペンクラブ)