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2015.11.16
[インタビュー]
「今回の16作品は後からCGを加えて変えることのできない、真摯な映画でした」-公式インタビュー:審査委員長ブライアン・シンガー監督

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©2015 TIFF

 
ショック療法が最新とされた時代に画期的な芸術療法を提唱した実在の女性精神科医の苦闘を描いた『ニーゼ』が、東京グランプリと最優秀女優賞をダブル受賞。また、『地雷と少年兵』では共演の新旧ふたりの俳優が最優秀男優賞に選ばれ、盛況のうちに幕を閉じた第28回東京国際映画祭。
コンペティション部門で上映された16作品の中から各受賞作を選出した、審査委員長ブライアン・シンガー監督に選考のプロセスなどを伺った。
 
――審査を終了した、いまの感想は?
審査委員長:16作品を9日間で審査するのは大変なことですが、やり甲斐もありました。6人の審査委員は、ひとりのプロデューサーをのぞいて全員がフィルムメーカーです。その彼らと共に毎日映画を見て、食事をして、時に議論をして、とても楽しかった。同じフィルムメーカーたちと仲間意識を持ちながら過ごすということは滅多にないので貴重な経験でした。
 
――グランプリと最優秀女優賞の二冠を受賞した『ニーゼ』の受賞理由と選考課程を教えてください。
審査委員長:『ニーゼ』に関しては、完璧にでき上がった作品だと審査員全員が思いました。精神を患った者を演じるのはとても難しいことです。彼らの感情、体現する道のり、心の葛藤など、見ている私たちが「本当にすごいな」という気持ちになりました。映画自体のペースもすごくいい。あれだけの難しい題材なのにユーモアもあって、さらに映画にエンタテインメントバリューを持たせている。本当に完成された作品だと思いました。
 
――個人的に感銘を受けたシーンがあると伺いましたが?
審査委員長:私が学生時代の時、精神障害のある子供たちが乗るバスの運転手をしていました。子供たちのなかにはいとこのキャリーもいて、彼女は自閉症でした。『ニーゼ』の中には女性患者と黒人男性の性的なシーンがあり、それを観ておじが話してくれたキャリーのエピソードを思い出したのです。それは同じ自閉症患者がキャリーの胸に触れた時に、看護師が患者の手を優しく制止したという話でした。同じようなシーンを観た時に、医者のニーゼは理解を持って患者をサポートしている。彼らの中に秘められた感情を出させてあげるということが、キャリーの思い出と重なってしまい、非常にエモーショナルな気持ちになってしまいました。
 
――『カランダールの雪』の最優秀監督賞受賞には議論が交わされたそうですが?
 :とにかくトラン・アン・ユン監督が最初から強く推薦していました。あの推し方を見た時に、みんな「ちょっと考え直さなければ」と感じたのです。というのも、私はアメリカの監督なので、どうしてもスピードを求めすますから、「なぜこんなに時間がかかるの?」が最初の感想でした。しかしトランさんの話を聞きながら、もし自分があの映画を作るとしたらどれだけ大きなチャレンジなのか。移り変わる季節の風景からその山に住む人々の営みを、あれだけリアルに映画で見せるのは監督としてすごいことだと考えるようになりました。そこで、“最優秀編集賞”は絶対にあげたくないけど(笑)、監督賞にふさわしいと思ったのです。
 
――審査員特別賞と最優秀男優賞の決定に、みなさん迷ったと伺いましたが?
審査委員長:最優秀男優賞に関して、『スリー・オブ・アス』のケイロン監督は演出に加え、演技も上手い。なので『地雷と少年兵』の俳優と、どちらにするかで迷いました。最終的には、あれだけの素晴らしい作品である『地雷と少年兵』に敬意を表して、同作の若手とベテランの俳優ふたりに最優秀男優賞、『スリー・オブ・アス』には審査員特別賞ということで収めました。ちなみに、私が個人的に推していたのは『神様の思し召し』だったのですが、最後まで推しきれなくて。神父と父親を演じた俳優ふたりがとても上手かったのですが、アーティスティックな意味においてはちょっと弱いと思ったのです。でも、その作品が観客賞を受賞したのを知って、「ほらみろ、仇を討ったぞ」と思いました(笑)。
 
――ブライアン・シンガー監督は『ユージュアル・サスペクツ』からスタートして、最近では『X-MEN』など最新の映像を駆使した作品まで走ってきましたが、今回のコンペティション作品のような手作りの作品を見られて、どのように思われましたか?
審査委員長:私も最初からCGやビジュアル・エフェクトなどを使った作品から入ったわけではありません。インディペンデント作品から映画に入り、いまでもテレビの仕事もしている。そういう作品を作っている時は、ある意味、昔に戻ります。今回の16作品を見て、これらは後からCGで変えることができない、手を加える必要のない作品。いわゆるオモチャではない作品です。たとえば群衆がいたら、CGで描いた群衆ではなく、本当に大勢の人がいるという意味においても、敬意を表する作品が多かったと思います。
(取材/構成 金子裕子 日本映画ペンクラブ)
 
第28回東京国際映画祭
受賞結果一覧

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