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2015.11.09
[インタビュー]
「登場人物の誰もが主観で証言しており、その歪んだ記憶を不鮮明な映像で工夫しました」-公式インタビュー:コンペティション『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』

モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ

左からロドリゴ・プラ監督、サンディーノ・サラヴィア・ヴィナイ プロデューサー
©2015 TIFF

 
一介の主婦が夫の治療に必要な手続きを求めて保険会社を訪ねるが、相手にされずに出た行動とは!? 皮肉な結末をもつサスペンス・ドラマで、時にオフビートな笑いを交えたタッチが秀逸。銃を手に真実を追求する主人公に拍手するもよし。戸惑いながら荷担する息子に成長をみるもよし。一連の事件が裁判の証言に関連づけられる凝った語り口に魅了されるもよし。技ありの作品をつくった監督と製作サイドに創作上の秘密を伺った。
 
──これは監督の奥様でもある、ラウラ・サントゥーロの犯罪小説(2013 年にメキシコで刊行・日本未翻訳) を映画化したものと聞きましたが?
ロドリゴ・プラ監督(以下、プラ監督):様々な映画や本から想を得て、脚本を書き始めましたがうまくいかず、妻がまず小説にしました。
 
──小説では章ごとに視点が入れ替わるスタイルだったのですか?
プラ監督:おっしゃるように複数の人物が登場し、それぞれの事件を目撃した人間の一人称で描いたものです。
 
──となると、場面ごとに登場人物の誰の視点と提示して語る方法も考えられたはずですが、本作では誰の視点かわからないままストーリーが進んで、途中で明らかにされます。非常にユニークな構成ですね。
プラ監督:小説の構造をさらに推し進めて、映画の語り口を構成しました。画面外から挿入される裁判の証言と、そのとき画面に描かれる出来事が完全に一致するとは限らないのはそのためです。実際、裁判の証言というのは起きた出来事を頭の中で再構成したものであり、人によって記憶は違ってくるからです。
 
──そうした記憶の作用をストーリーに取り入れているところに、本作の独創性があります。
プラ監督:映画が進むにつれて、少しずつ裁判の証言が観客のもとに集まりますが、それは事実というよりも各人の記憶であり、断片的な情報です。映像と証言をつなげて事件をどう解釈するかは観客に委ねていて、それぞれ違った解釈が生まれるところにミステリーが成立するのです。
 
──アウトフォーカスを多用して、ぼんやりした後景に事件が起きる展開もスリリングでした。
プラ監督:誰もが客観的に事件を見ておらず、主観で証言している。歪んだ記憶の映像であることを示すために、誰かの背中越しに不鮮明に出来事を映したり、フレームの外にわざと人物を置いて、全体を明かさないように工夫しました。脚本のアイデアをうまく映像化できたと思います。
 
──話術といい映像設計といい、とても野心的な作品です。プロデューサーとしてはリスクを感じませんでしたか?
サンディーノ・サラヴィア・ヴィナイ(以下、サラヴィア・ヴィナイ):たしかに野心的ですが、監督夫妻と仕事するのはこれが2本目であり、脚本・演出とも好みなので不安はありませんでした。
 
──制作費はどれくらいでしょう?
ヴィナイ:140万ドルぐらいです。メキシコの標準からすると少々高めです。もちろん、もっとお金をかけた作品もあるし、若手は友人同士で助け合いながら低予算の作品を作っています。普通なら予算を考えて、早めに撮影を終えようとするところを、われわれは7〜8週間かけて撮影します。そうして質の高い作品に仕上げることを心がけました。
 
──監督はウルグアイ出身ですがメキシコで映画を撮り続けています。メキシコには、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥやアルフォンソ・キュアロン、ギジェルモ・アリアガのように話術に長けた監督が多いですよね。彼らの影響というのは強いのでしょうか?
プラ監督:いまメキシコ映画は大変よい時代を迎えています。ハリウッドに人材を輩出し、大作を撮って成功した監督がいる上に、新たな世代がどんどんチャレンジングな作品を作っているのです。彼らも先達の作品を観て、それ以上のものを作りたいと頑張っていて、互いに切磋琢磨できる恵まれた状況にあります。イニャリトゥ、キュアロン、アリアガだけではなく、カルロス・レイガダスやアマト・エスカランテなどの作品を観て彼らを乗り越えようとしています。
 
──社会への怒りを秘めた作品でありながら、ユーモラスな場面もあります。全裸の男性がプールにいる女性たちの前に突然現れたり、80年代のパンク・ロックの話題を取り入れて、楽しめる映画になっています。こうしたオフビートなテイストも監督の好みなのでしょうか?
プラ監督:もちろんです。私たちは映画のなかに、小出しにユーモアを加えていこうと試みました。というのも、年をとるにつれて、人生というのは悲惨な状況のときでさえ笑いがあると知ったからです。
音楽に関しては、息子と周囲とのつながりを考える中で、80年代音楽の話題を使おうと考えました。台所の場面でバットをもつ男性と束の間、音楽の話題で盛り上がるという面白い場面が生まれました。最後に、いかにも80年代っぽいガレージ・ロックをかけてパンクっぽく決め込みました(笑)。
(取材/構成 赤塚成人)
 
モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ

©2015 TIFF

 
『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』
作品詳細

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