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2015.10.29
[イベントレポート]
「昔の恋人がいて、失恋があって今のあなたがある。それは人生が与えてくれる成長の一過程であるのだと感じてもらえたら嬉しい」アジアの未来『If only』-10/24(土):Q&A

If Only

タナイ・サータム / ヴァルン・ミトラ / ニディ・スニール / イシャーン・ナイール / カーヴヤ・トレーハン|©2015 TIFF

 
10/24(土)アジアの未来『If Only』の上映後、イシャーン・ナーイル監督、ニディ・スニールさん、ヴァルン・ミトラさん、カーヴヤ・トレーハンさん、タナイ・サータム撮影監督をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 

イシャーン・ナーイル監督(以下、監督):私の初の劇映画をご覧いただきありがとうございます。私は以前ファッションの写真家をしていました。そしてずっと映画を撮りたいと思っていたのですが、ボリウッドのプロデューサーを説得するのに6年間かかり、ようやく出来上がったのがこの映画です。ボリウッドで作られている映画というのはとても商業主義の色が濃く、今回のような映画は珍しいのでなかなか大変でした。こちらに私の美しいキャスト達が並んでいます。クシャーリ役、その隣がサミール役、そしてアーディル役の役者です。皆初めて映画に出た人たちです。そして、一番端にいるのが撮影監督のタナイ・サータムです。
 
Q:まさに新しいインド映画であり、インド映画のニュータレントの方々によって作られたということで、凄く刺激的な映画でした。皆さんがキャラクターの違うそれぞれの役柄を、くっきりと演じていらっしゃったと強く感じます。監督はどのような指示を出されたのですか。また、俳優の皆さんは役柄についてどのように考えて演じられましたか。
 
監督:この映画は私の自伝的要素が強い作品です。なので、それぞれの役柄にどのような色をつけたいかは、はっきりと頭の中にありました。彼らを選ぶ際には、演技力よりもその役柄に誠実でいられる人ということを頭におきました。彼らと一緒にワークショップを行ったのですが、本当に一生懸命やってくれました。また、それぞれの人がものすごく才能を持っていて、それを思いきり発揮してくれたと思います。私にとって初の劇映画ですけれども、彼らにとっても初めての映画とは今でも信じられません。
 
カーヴヤ・トレーハンさん(以下、トレーハンさん):今作は私にとって初めての映画出演でした。私は実はミュージシャンでもあり、心理学者でもあります。けれど、監督の本当に素晴らしい演技指導のお陰で、私たちがそれぞれの演じる役柄をしっかりと発見し、まるで新しい人に会うかのように演じることができました。私が演じたクシャーリは本当にシンプルな人間なので、最初はその役になりきるのが大変でした。彼女との接点を見出すのも難しかったですし、言葉を学ぶのも大変で、いろいろとレッスンを受けました。ですが、キャストの皆さんや監督のお陰で、私の映画を撮る旅は初めから終りまでとても新鮮で楽しいものでした。
 
ニディ・スニールさん(以下、スニールさん):監督は編集作業などで千回は観ていると思いますが、実は私は今日初めてこの映画を観たんです。ずっと泣きっぱなしでした。実はこの監督はとっても嫌な奴なのですが、現在インドが誇る最上の監督だと思います。ご覧のとおり、私は肌の色がとても黒いのでボンベイでモデルをしています。ファッション業界においては肌の色云々は問われません。しかしボリウッドにおいてはやはり色白が好まれるため、私は何度も何度も映画のオーディションに行きましたが役をもらったことはありませんでした。まさにこの映画の中でサミーラが「肌が黒い、受け入れられない」ということを言う場面がありますが、この映画を作るということは、私にとっても心の琴線に触れる体験でありました。とにかく素晴らしい監督です。
 
ヴァルン・ミトラさん(以下、ミトラさん):今、私の心臓はドキドキしています。イシャーンは私の長年の友人です。彼がボリウッドのプロデューサーを説得するのに6年かかったと言っていましたが、私もイシャーンを説得するのに本当に長い時間がかかりました。長年、「自分をテストして役者に起用してほしい」と言っていたのがようやく叶いました。私たちは長年来の友人で、それぞれの最初の失恋が似たようなタイミングだったので、それを思い起こせばこの役をできるのではないかと思っていたんです。しかし、イシャーンはなかなか同意しませんでした。一方で、昔からの友人が監督する映画に出演するというのは思ったよりずっと難しいものでした。それでも映画が完成したということは、自分に失恋の機会をくれた私の最初の恋人にお礼を言わなくてはいけないかもしれません。イシャーンは失恋の時のことを私にいろいろと語りかけることで思い起こさせ、その時の体験を追体験させてくれたました。おかげでアーディルの役がやりやすかったと思っています。
 
Q:続いて撮影監督のタナイさんです。色彩も、映像のリズムやセンスも本当に素晴らしい。これが1本目の撮影監督とはとても思えませんでした。どんなことを考えながら撮影に臨まれましたか。
 
タナイ・サータムさん(以下、サータムさん):私はカメラの前にいるよりも後ろにいるほうが慣れている人間なので、いま少し恥ずかしいです。最初に脚本を読んだとき、すでにそこには色、アート、ムードの指定がしっかりと書き込まれていました。イシャーンが共同執筆した脚本に書かれていて、彼と私とデザイナーのディヤとでいろいろと相談してやりました。行った先々の場所で、そのスペースに身を任せて撮っていったという感じでしょうか。
 
Q:映画を拝見して、私自身のいろいろな記憶が呼び起こされました。ミトラさんご自身は、アーディルと似ているところはありましたか。
 
ミトラさん:答えはYesとNoです。Noという理由は、あれは私ではなくイシャーンだからです。そしてYesという理由は、私たちは皆初めての失恋の時には世界の終りであるかのような気がしますし、とても実際的なことは考えられないからです。
 
Q:イシャーン監督に質問です。フォトグラファーとして活躍されていた時から、肌の色が黒い女性への偏見に対して何かご意見をお持ちで、こういった映画に繋がったのでしょうか。
 
監督:ファッションの世界で写真家として活動していた時に、常に思っていたことがあります。それは肌の黒い人への偏見のみならず、その業界で女性に対してどれだけ非人間的な扱いをするのかということでした。それが原因で、ノイローゼになる人もいるくらいです。私は、家族の中で特に色が黒い子供でした。姉妹を見ていると、私よりずっと肌が白くて、何でこんなに黒いのだろうと思っていた頃もありました。本当にこれは悲しいことです。インドがかつて英国の植民地であったという歴史に、影響を受けているのだろうと思います。肌の黒さだけでなく太っていることやにきびがあることなどを理由に、他人に悲しい思いをさせ、心理的に滅茶苦茶にしてしまう……。それは私にとってとても気にかかることでした。私たちは皆同じ人間であって、外側がどう見えているかは大事なことではないのですから。
 
Q:舞台としてアーメダバードを選んだ理由を教えてください。
 
監督:あの町を選んだのは、私自身が失恋をしたときに実際に行ったから、つまり実体験に基づいているのです。それから、あのような何も起こらない退屈な町を取り入れるのも面白いのではないかと思いました。インドという国は往々にして村の貧しい人ばかりを描くことが多いのです。そのことに私はうんざりしていました。また、この映画でもう一つやりたかったことは、インドはボンベイのような本当に発展を遂げた都市部、発達途上の町、そしてまだ全く開発されていない部分からなる複合体であるということを、声高に述べるのではなくそれとなく映画に取り込むことでした。そういうわけで、ボンベイがどのように発展しているかや、アーメダバードがどのように開発されつつあるかを見せのです。また、例えばクシャーリは列車に乗り、アーディルは飛行機に乗って旅をしますよね。主人公たちが乗る乗り物で、属する階級の差のようなものも出したつもりです。インドの多様性を見せたかったのです。それこそがインドの真の姿をお見せすることだと思いました。
 
Q:脚本が重層的でいろいろなストーリーが組み合わさっていますが、観客の人たちにぜひ一つ持ち帰ってほしいものがあるとしたら、それは何でしょうか。また、タイトルにある『If Only』ですが、このIf Onlyという文章を完成させるとしたら、後ろにはどのような言葉が入るのでしょうか。
 
監督:そんな難しい質問をするからには、後から飲み物をおごってくださいね。私が皆さんにぜひ感じていただきたいことは、人生は本当にいろいろな試練を私たちに与えるということです。人間は恨みや憎しみを持ち続けることもがありがちですが、人生は私たちの成長を手助けしているのだという考え方を映画から感じて欲しいです。「昔の恋人がいて、失恋があって今のあなたがあるのだ」と。そんな風に、これは成長の一過程であると感じていただけたら嬉しいです。
 
トレーハンさん:私もやはり、(If Onlyという文章を完成させるとしたら)「肌に残った塩の味を忘れないで」と続きをいれようと考えていました。
 
スニールさん:さっきのご質問で文章を完結させるとしたら、映画にもあったように「あのような形で恋に落ち、またあのような形で恋を終えられたらどんなにいいでしょう」と、続きをいれたいです。通訳の方に飲み物を2杯おごりたいと思います。
 
ミトラさん:最初の失恋を忘れないでください。いつかその体験が役に立つことがあります。
 
監督:実はカメラマンはとてもシャイな人間なので、ここで私がカットをいれます。彼は仕事をしている時は鋭くて、私が間違うとよく「カット」「カット」と言われたので、ここでお返しをしようと思います。今回、東京国際映画祭にうかがえたのは、本当に名誉なことだと思っています。日本で出会った方は親切にしてくださいます。私が地下鉄の駅から自分の宿までどう帰ってよいか迷ってしまうので、毎晩宿まで送り届けてくださるなど、この映画祭は素晴らしく組織されています。私たちの世話をしてくださっているキコさんに、特にお礼を言いたいと思います。このようにして映画を観ていただくことができたのは私にとって素晴らしい経験でした。これから外にいますので、私たちと飲みたい方はお声かけてください。今、少しドキドキしているのでお酒が必要です。それから、いろいろなSNSでこの映画について書いているので、どうぞフォローしてください。

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