10/23(金)特別招待作品『サヨナラの代わりに』主演ヒラリー・スワンクさんの記者会見が行われました。⇒作品詳細
次回上映:10/27 12:20-
登壇者:ヒラリー・スワンク(主演・プロデューサー)
司会:まずははじめに一言、ご挨拶をいただきたいと思います。
ヒラリー・スワンク(以下、ヒラリー):皆様、こんにちは。このすてきな街にまた戻ってこられて大変うれしく思っています。私が大変敬意を感じている日本の文化、日本の人々、お食事をたくさん楽しんでおります。
司会:本作では主演だけでなくプロデューサーも務められていますが、この映画を作るきっかけと、主演をご自身で演じようと思われた理由をお聞かせください。
ヒラリー:(原作小説について)まず、本当に友情と愛情のとても美しい物語だと思いました。ALSという病気が登場しますが、これについては原因も治療法もまだ分かっていません。映画に登場する2人のキャラクターは、予期せぬ友情をこの逆境の中で育むことになります。そこにすごくパワフルな美しい物語を感じましたし、「人生は短くて、だからこそ毎日、瞬間、瞬間を大切にしなければいけないのだ」ということを思い出させてくれるストーリーだと思いました。それが理由です。
司会:ケイトを演じる中でヒラリーさんが得たものは、どのようなものだったのでしょうか?
ヒラリー:役者であることのすばらしいところは、キャラクターを演じることで、人間としてのたくさんの贈りものがあることなのです。キャラクターの立場に立っていると、その方の目を通した世界観に触れることができて、私自身の世界観や考え方がどんどん広がっていくように感じる。これが贈り物のように思えるのです。今回のケイトには、本当に「私たちには今この瞬間しかなくて、だからこそ大切に生きなくてはいけないのだ」ということを学びました。また、人生において大切なのは、「あるがままの、100%の自分であること」だと思うし、それを見てもらうことだと思います。ベックはケイトにその贈りものをあげることができるけれど、実はケイトもまた、ベックにその贈りものを返しているのです。
司会:もしも、ケイトのように時間が限られてしまったら、ヒラリーさんは何をしたいですか?
ヒラリー:本当に私は恵まれていると思います。違う役を演じることで、自分の世界が豊かなものになり、また仕事のために世界中を旅することができて、見ることができる。それが人生を豊かにしてくれています。それは重要なことです。自分とはタイプの違う方と出会ったり、日本に初めて来て文化に触れたり。そういう形で「いろんなものに触れていくこと」というのが私のやりたいことだと思います。そして、これは数年前になりますが、本当に自分の愛する人たちと、きちんと時間を過ごそうと心に誓いました。そう思わせてくれたのも、この『サヨナラの代わりに』という作品です。瞬間、瞬間を大切にする、生きる大切さを感じさせてくれます。だからある意味、死ぬまでにしたいことのパケットリストを、私はいま生きているんです。
司会:エミー・ロッサムさんについておうかがいします。『オペラ座の怪人』でも有名ですが、相手役に彼女を選んだ理由、共演してみた感想をお聞かせください。
ヒラリー:エミーは本当にすばらしい才能を持った役者さんで、実は今回、オーディションで選びました。オーディション中、私は違う作品に入っていたので現場にいることはできませんでしたが、エミーのオーディションのテープを見たときに、彼女しかいないと感じました。ベックという役の本質、スピリット、自由奔放さ。そういうところをすべて掴んでくれていて、その瞬間、彼女だと私は心に決めました。私はプロデューサーでもあるわけですが、そのすごくいいところはこのようにキャスティングにも大きく関わっていけること。そして彼女との共演は、本当に、本当に素晴らしかったです!
Q:ご自身の女優活動を振り返り、どのように感じていますか?
ヒラリー:自分の人生の半分が女優なのだと考えると本当にクレイジー!すごいことだと思います。思えば8歳のときに役者になりたいと思い、自分は今、その夢を叶え、夢を生き続けている。本当に恵まれていると思いますし、それを当たり前と思わず、きちんと感謝するということも心がけています。また、共演者や監督たちとのコラボレーションには大変な喜びを感じます。そして先ほども触れましたが、他のキャラクターを演じることで私自身が得られることも本当に多いです。実在の人物もかなり多く演じましたが、どの役でも、インスピレーションを与えてくれる女性たちを演じてこられたことをとても誇りに思っています。
Q:カンヌでは、少しお休みをとりたいとおっしゃっていましたが、その後どうなさったのですか?また、イニャリトゥ監督との映画や、アニメーションの声優をされたことについてもお聞かせください。
ヒラリー:実は父が肺の移植をしたので、1年ばかり仕事を休んでずっと看ていました。それがある種のお休みだったでしょうか。父と二人で過ごしました。そして、私はこれからアレハンドロ・イニャリトゥ監督との仕事を控えています。彼は素晴らしいビジョンを持った監督ですから、ご一緒できるのを楽しみにしています。ただ、今はディカプリオとの映画をちょうど終わらせているところなので、もう少し後ですね。それからアニメ映画の声優もしましたが、こちらもすごく楽しかったです。声をあてるのは2日間でしたが、もっとやりたいと思いました。またアニメーション映画にも出たいです!
Q:先ほど「一瞬一瞬を大切に」とおっしゃっていましたが、具体的にはどんなことをされていますか?
ヒラリー:例えば、誰かのことをふと思ったときに、「どうしているかな」という気持ちを何の形にもせずに終わらせるのではなく、実際にお電話をしたりテキストメッセージを送ったりするようにしています。それから、今まさにチャリティーを新しく立ち上げようと準備中なのです。これは例えば、捨てられた動物や子供たちと一緒に時間を過ごすことによって、ヒーリングや責任感を育んでいこうという目的を持ったチャリティーです。本当に充実していますが、やはり立ち上げは何事も大変ですよね。毎日これで忙しいです。また、1日でもいいのでそういう仕事をストップしてお休みする時間も作っています。ハイキングをしたり犬と遊んだり、本を一章読んだりすることも大切なことだと思っています。それから、次のプロジェクトを探すこと。脚本家や新聞記事、本……と色々なものにアンテナを張っています。ですから、毎日やることが沢山で、よく「時間があるときは何をされますか?」と聞かれるのですが、「時間があるときなんてないわよ」という感じです。
Q:オスカーのシーズンもそろそろ始まるということで、受賞したことを思い出されたり、もう一つオスカーが欲しいなと思われたりすることはありますか?
ヒラリー:8歳の時に役者になりたいと思った時に、オスカーや賞についてなんて当然考えていませんでした。ストーリーやキャラクター、そういうものに関わりたいという思いが強かったのです。もちろん、賞をいただけるのは大変光栄なことです。自分がいただけるなんて、想像もしていませんでした。けれども、オスカーのシーズンというのは、すごく楽しい時期でもあると思うんですね。自分が関係している作品はすべてチェックするようにしています。例えば『ボーイズ・ドント・クライ』という作品は、とても小さい作品でしたが、賞をとったということで、たくさんの方が見てくださいました。様々な作品を観る機会だと思うので、私自身はすべてチェックして、それぞれの演技やテーマについて考えるようにしています。
Q:去年、アイスバケツチャレンジがネット上で大変話題になりました。あのようなキャンペーンは成功すると思いますか? あのチャレンジがあったことで、『サヨナラの代わりに』が作られたのでしょうか?
ヒラリー:まず、キャンペーンについては、あのようなちょっとひねりを加えたキャンペーンを行うことで、ALSについての認知度を上げるという意味では素晴らしいものだと思いました。私自身も最初に『サヨナラの代わりに』の原作を手にとった時はそれほど知識があったわけではありません。質の良い広報やキャンペーンを通して、たくさんの方がALSについて話し始める。そうすれば、まだ見つかっていない治療法の研究等にもきっと資金が集まってくるでしょうから。『サヨナラの代わりに』の撮影は、アイスバケツチャレンジの前に終わっていたので、そういった意味では同じくらいのタイミングでしたね。
Q:日本の学生のために映画祭の宣伝をしています。学生に向けてのコメントをお願いします。
ヒラリー:少しありきたりな表現かもしれないけれど、人間は、すべての人が人生の生徒だと思うんです。だから学校に通っている生徒さんでなくても、皆生徒であることには変わりはありません。人生においてはやっぱりネバーギブアップ! どんな逆境があっても諦めず、頑張ってそれを乗り越えていくことが本当に重要なことだと思います。
それから、若いときに「こう言ってもらえたらよかったな」と思うことも一つあります。それは自分自身を形作っていくときに、「私が定義する自分はこういう人間なんだ」と決めるのは、やはり自分自身であるべきだということです。あるいは、「自分が誰なのか」ということを、自分のために、自らの手で作り上げていくべきだということです。というのは、他の方の意見や、どのように見られているかを気にしてしまうことも人生には多いから。でも、本当に自分のやりたいことを自分で見つけて、そして夢に向かってそれを叶えるための選択を日々していく。そういう生き方をすることが大切だと思います。